パナソニックの有機ELテレビ、2023年モデルであるMZ2500シリーズが7月21日から発売されますが、「かつてない明るさ」のマイクロレンズ方式の有機ELは知らずに買うと後悔するデメリットがあります。
- 自宅では不要な明るさ
- 焼き付きリスクの増加
唯一のメリットは、明るさを落として使えば、従来の有機ELと比較して省エネである点のみです。
消費電力の高い有機ELで省エネは嬉しいメリットですが、省エネのために既存有機ELより20万円以上高いお金を出すのは本末転倒ともいえるため、購入を検討している方向けにデメリットを分かりやすくお話いたします。
MZ2500シリーズのデメリット
2023年モデルのMZ2500シリーズは「マイクロレンズ方式」を採用することにより、2022年モデルのLZ1800(上位でなくスタンダードのシリーズ)と比較して約2倍の輝度を誇ります。
有機ELはもともと漆黒の表現能力が高く、暗さと明るさの差があればあるほど映像には奥行が生まれるため、約2倍の輝度となれば映像がよりリアルに見えます。
ただし、マイクロレンズ方式は、有機ELが抱える焼き付きリスクを増大させます。
マイクロレンズアレイとは、1画素あたり数千個の微細な凸レンズを面上に配置したもの。この凸レンズを従来の有機EL発光層と一体成型する事で、内部反射で失われていた光を表面に取り出す仕組み。
電気的な負荷をかけて、輝度を持ち上げているわけではないため、「消費電力はそのままに、輝度とコントラストを大幅に高めることができるのがメリット」という。
引用元:パナソニック ビジュアル・サウンド機器を開発する技術センター長・清水浩文氏(AV Watch)
従来の有機ELでは「発光層」と「パネル表面」の間にある「ガラス」で内部反射が起きていたため、「レンズ」で光を集束させて前面に押し出すような形にすることで内部反射を減らし、輝度を2倍に引き上げています。
ただし、元々のエネルギー(消費電力)を下げずに押し出す光のパワーを上げているため、パネル表面に与える熱エネルギーは従来比2倍となり、焼き付きリスクが増大します。
焼き付きリスクについて分かりやすくいうと、「太陽光と虫メガネで燃える紙」と同じです。
太陽光を虫メガネで集束させ、黒い紙に当てて燃える実験をした方も多いと思いますが、有機ELも内部からの光をパネル表面に当て続けることで焼き付きを起こします。
従来の「ガラス方式」であれば内部反射があったおかげでパネル表面に与えるパワーが減っていて、その分焼き付きリスクが抑えられていたところ、「レンズ式」のMZ2500はリミッターを解除してしまったような形です。
これが、従来の有機ELが内部反射の影響で表現できる明るさが足りていなかったのであれば必要なリミッター解除ですが、従来の有機ELで明るさが足りていなかった場面は「家電量販店」で見比べるときだけです。
仮にMZ2500シリーズを購入した場合には、明るさが大幅に落とされた状態で出荷されます。
輝度2倍は「自宅」で見る場合には不要な明るさであるため、注意しましょう。
テレビメーカーが自宅で不要な明るさを追い求める理由
通販で物を買うことが当たり前である2023年になっても、テレビの購入場所の約半数は家電量販店が占めています。
自分の目で見比べて購入できる場所は家電量販店だけであり、見比べる=良い物を買いたい方が多いため、製造メーカーは高単価のモデルを売るチャンスです。
そのチャンスを逃さない主な手法が、家電量販店の明るさを利用した人間の目の「錯覚」です。
- 人間は明るければ安心し、反対に暗ければ不安になる生き物である
- 家電量販店は自宅よりずっと明るいため、実は自宅で使うなら十分に明るいモデルを暗く感じさせることができる
つまり、家電量販店で見比べる場合は明るいテレビほど安心(綺麗)に感じやすく、価格が安いけれど暗く感じる型落ち機種の購入を防ぎ、価格が高いけれど明るく感じる新機種の購入を促す環境が整った売り手有利な環境です。
商売なので当然の手法ではありますが、メーカーは輝度2倍の高画質化をアピールしておきながら、実際には明るさを大幅に下げた状態でテレビを出荷するため、買い手からすれば何1つ信用できません。
- 輝度2倍は家電量販店用の「ダイナミックモード」を使用したときの数値である
- 自宅では不要な明るさであるため、「スタンダードモード」に設定されている
- 自宅では見比べないため、モードが変更されていることに気付く人はごくわずか
自宅で使用する場合でも、自分で設定を変更すれば「ダイナミックモード」を使用できるため、メーカーが嘘をいっているわけではありませんが、輝度2倍の最高画質を謳っておきながらそのモードを標準設定にしていないことは、自宅では不要と言っているも同じです。
- ダイナミックモードは自宅で使用するには眩しすぎる
- スタンダードの明るさに落とさないと、焼き付きリスクが増大する
- スタンダードの明るさに落とさないと、電気代が大幅に高くなる
- スタンダードの明るさに落とさないと、寿命が大幅に短くなる
テレビは自宅用のモードと家電量販店用のモードがあり、寿命の長さや省エネ性能は自宅用のモードで語られ、画質の良さは家電量販店用のモードで語られるため、情報の見極めが非常に困難です。
家電量販店に行って自分の目で見比べようとしても、その時点でメーカーの策にはまっており、店員も高いモデルを売ることが仕事であるため、本当のことを教えてくれる人はほとんどいないでしょう。
家電量販店に行って自宅用のモードで見比べようとしても、業務用の照明の下では新機種も従来機種も暗く感じて綺麗に見えないため、正しい比較ができません。
1ついえることは、内部反射による光のロスを減らしたMZ2500シリーズは、「従来機種と同じ消費電力でもより明るい」=「同じ明るさまで落として使えばより少ない消費電力」となるため、省エネ性能だけは確実に改善されています。
MZ2500シリーズの省エネ性能
消費電力 | 明るさ | 年間消費電力量 | |
TH-55JZ1800 (2022年モデル) | 304W | 100% | 175kWh |
TH-JZ2000 (2022年モデル) | 435W | 120%程度 | 190kWh |
TH-55MZ2500 (2023年モデル) | 454W | 200% | 182kWh |
年間消費電力量を見るとどのモデルも大差ありませんが、明るさが異なるため、同一の明るさまで落とせば消費電力量はMZ2500がもっとも少なくなります。
ただし、次の点に注意してください。
- 年間消費電力量は自宅用のモードの数値である
- 有機ELは液晶テレビよりも根本的な輝度が低いため、自宅用のモードのままでは暗くて見づらい
- 自宅用のモードのまま明るさを20~30%高くしてやっと液晶テレビと同程度の明るさになる
有機ELは自宅で見づらい暗さまで落とすことで、液晶と同程度まで電気代が安いと見せかけることができ、焼き付きリスクも十分に軽減でき、寿命も液晶と同程度まで引き上げることができます。
慣れれば暗くても見づらいと感じなくなりますが、有機ELは映像の綺麗さを求めて購入するはずなので、見づらいのに設定を変えず我慢して使うくらいなら液晶テレビを買いましょう。
その点、MZ2500シリーズの明るさがあれば、自宅用のモードで明るさを引き上げなくても見やすいため手間いらずで、従来モデルで明るさを引き上げて使用するときよりも省エネ性能を発揮します(従来機種で明るさを引き上げると、メーカー公表の年間消費電力量を大きく超える)。
ただし、MZ2500シリーズは全国統一の価格で販売されるため、量販店や通販同士の価格競争がなく、非常に高額です。
55インチで37万円、65インチで52万円するため、省エネ性能のためだけに購入することはおすすめできません。
従来機種でも、自分で明るさを変更するのであればMZ2500シリーズの自宅モードと同じ明るさまで引き上げられるため、型落ちモデルや他社の有機ELモデルを購入しましょう。
なお、有機ELの画質はminiLED液晶テレビをはるかに超えるため、有機ELテレビの購入自体は非常におすすめです。
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